Kowa SW
【Kowa SW】SPECIFICATIONS
製造メーカー名
発売年
型式
画面サイズ
レンズ
ファインダー
ファインダー倍率
露出計
フィルム感度対応範囲
シャッター
シャッタースピード
セルフタイマー
シンクロ接点
フィルム巻き上げ
フィルム巻き戻し
電源
サイズ
重量
販売価格
日本の大卒初任給
興和株式会社
1964年 7月
35ミリレンズシャッター式超広角専用カメラ
36mm × 24mm
コーワ28ミリ F3.2。 クセノタータイプ4群6枚構成。画角74°
実像式ケプラー型。
0.4倍、視野比90%
無し
ー
セイコーSLVO 0番B。
B, 1 ~ 1/500 秒
有り
1~1500シンクロMX切換式。
ポディ上部のレバーによる巻上げで180°一操作セルフコッキング。
折りたたみクランク式
ー
127 x 76 x 51mm。
580グラム
カメラ:¥23,500 、ケース:¥1,300
17.100円
作例
感想
もし、コーワSWを手にいれることができたならば、このカメラで撮影してあなたは2度驚くことになるでしょう。一つはファインダーの視野と明るさ、もう一つはこのレンズの解像度の高い写りです。
ファインダー
なんらかの形で手にすることがあれば、必ずファインダーを覗いてみてください。きっとそのファインダーの見え方に驚くことでしょう。ファインダー倍率は0.4倍ですが、このカメラの正面からみたときにレンズの上にあるフジツボのような小さな穴からは想像できない見え方にきっと驚くことでしょう。そしてこの倍率にしてはよく見えるなと感じる理由として、肉眼で見るよりも明るく見えるファインダーが要因かと思います。この手のカメラの使いやすさや、ストレスを感じずに撮影できることは、ファインダーが大きな要因を占めると私は思っています。
1)ファインダー倍率が高いこと。
2)ファインダーが明るいこと。
このカメラの場合、目測式のカメラですので、0.4倍のファインダー倍率は撮影上あまりストレスにならず、なんかファインダーを覗くのが楽しくなるようなカメラです。
写り
このレンズの開放値はf3.2でですが、目測式のカメラですのでf8前後で撮影することを設計されていますので、日中 外で撮影をするのには十分な レンズだです。コーワはレンズ交換式というよりも、28mmのレンズを買うよりもボディ付きのレンズを買ってくれた方が早いという思想でいろいろとカメラを製作していたようです。1964年当時広角といえば35mmが主流で、28mmのレンズというものはありませんでした。ですのでスーパーワイドという意味でこのカメラにはSWという名がつけられました。また、このカメた翌年にライカのエルマリート28mmf2.8が発売されたこともあり、Poor Man's Leicaとも揶揄されたようですが、裏返していうと安いカメラでもライカ並みに映るということになります。プロのカメラマンはこのカメラをサブ機として使用したと言われているカメラです。
残念な点
このレンズには被写界深度目盛りがレンズにありません。 目測式で撮影するカメラですので、なんらかの形で被写界深度表なり、目盛りなりを付けて欲しかったところです。
総評
このカメラは露出系も搭載されておらず最低限の機能でシンプルに作られたカメラであり、カメラの質感、レンズの性能もよく、撮影していて楽しめるカメラであるだけに、このシンプルさが格好良く見えるカメラです。
Kowa 28mm F3.2
レンズ
コーワレンズ28ミリ F3.2は4群6枚構成でいわゆるクセノタータイプの改良型である。画角は74°、コーティングはアンバーである。距離目盛は ∞, 3, 1. 5, 1, 0.8, 0.6, 0.5mで 60°回転の直進へリコイドによるフォーカシング。絞りは F3.2, 4, 5.6, 8, 11, 16。 フィルターは43ミリまたは49ミリねじ込み式である。
広角レンズにはコサイン4乗則といわれるいわゆる半画角の4乗に比例して画面の周辺の照度が低下する現象が極めて頭著にあらわれてくるので,標準レンズに比して開口効率を充分大きくする必要があるが、開口効率を大きくとると解像力が低下してくるため高性能広角レンズの設計製作は実際にはなかなかむずかしい。#00 シャッターに組込む際,交換レンズの場合とは違ってレンズの外径がシャッグーによって制限をらけるが、これはシャッターの保持部に改良を加えることによって開口効率60パーセント以上を保つことができた。この数値は焦点距離50ミリの場合の開口効率33パーセント以上に相当するため,実用上光量不足を感ずることはない。画角が大きく,開口効率が大きい場合は全画面一様な解像力を保つことは困難であるが、収差カーブが示すよらにスミまで充分残存収差が除去できているので,中心に比して画面のスミの解像力の低下が認められないほどに全画面一様な結像特性をもっている。
解像力がいくら良くても低い空間周波数におけるレスポンスが高くないといわゆるコントラストの良い画像が得られないので,この点にも充分留意されている。即ちコマ収差,色収差の除去を充分行って光束の集光状態の補正にも配慮してあるのでコントラストの良好な結果が得られる。
このレンズタイプはレンズの研磨上は極めてコスト高になるが,このカメラがレンズにらるさい人々に使ってもらうことを目標としているのであえて採用しているわけである。
このカメラには距離計がついていないが,撮影レンズの焦点距離が短いため焦点深度がかなり深いので実用上それほど大きな不便をあたえない理由のためである。例えば 3mにレンズをセットしておいてF11まで絞ると∞から1.3m までが最小錯乱円 0.033mmに入る。即ち一般的に表現すれば∞ 〜 1.3m の間にある物体にピントが合うことになる。3mとF8の目盛はオレンジ色で他の黒色と区別してあるが、この二つの目盛を合わせておけば41.4m から1.8mまでの物体が深度内に入る。即ち実用上はほとんどの物体にピントが合うことになるので,便利な目盛である。
最短距離は0.5mになっているが、このときはF値が9パーセント大きくなるが,光量は約20パーセントの減少にすぎないので,この点もほとんど問題にしなくてもよい。
(写真工業 1964年6月号 特集:新型カメラの技術資料 コーワSW (スーパーワイド)技術資料より抜粋)
ファインダー
ファインダー3群4枚構成の対物レンズと2群3枚構成の接眼レンズに正立用の3個のプリズムから構成されているポロプリズムを組合わせた いわゆる実像式光学系である。 撮影範囲が 74° と標準レンズに比して50%以上も大きな視界用のファインダーにもかかわらず、射出位置をできるだけ大きくとって眼鏡をかけていても楽にスミまで見えるように配されている。またこのタイプの光学系のファインダーは一般に倍率が低いが広視野をカバーしながらも倍率を0.4倍と比較的大きくとり、なおかつ全体をコンパクトにまとめるため視野絞りはポロプリズムの中に配置されている。広視野になるとファインダー内部の反射が多くなって見づらくなるが、このファインダーには対物の前面に光束絞りを配置しプリズムにも特殊加工をして反射が除去され極めて見やすくなっている。光束絞りは外観上アクセントを出す効果をもはたしている。視度は-1.5D,視野は90パーセント。
写真工業 1964年6月号 特集:新型カメラの技術資料 コーワSW (スーパーワイド)技術資料より抜粋)
撮影の仕方
コーワSWはマニュアル操作で撮影。広角レンズの特性を活かし距離計は搭載されておらず、レンズの鏡胴周りの操作だけで撮影します。しかし、このカメラには被写界深度目盛り、被写界深度表が搭載されておりませんので下記の被写界深度表を携帯電話で撮影して保存しておくか、下記の文面を把握すると、撮影に困ることはなく、ピントは外すことはありません。
Kowa SW の被写界深度表
このカメラには距離計がついていないが,撮影レンズの焦点距離が短いため焦点深度がかなり深いので実用上それほど大きな不便をあたえない理由のためである。例えば 3 mにレンズをセットしておいてF11まで絞ると∞から1.3m までが最小錯乱円 0.033 mmに入る。即ち一般的に表現すれば∞ 〜 1.3 m の間にある物体にピントが合うことになる。3 mとF8の目盛はオレンジ色で他の黒色と区別してあるが、この二つの目盛を合わせておけば41.4m から1.8mまでの物体が深度内に入る。即ち実用上はほとんどの物体にピントが合うことになるので,便利な目盛である。
写真工業 1964年6月号 特集:新型カメラの技術資料 コーワSW (スーパーワイド)技術資料より抜粋)
フード
このカメラで撮影した写真を見ると60年前(2025年現在)に製造されたカメラとは思えない写りに驚かされます。そうするとこのカメラ専用のフードが欲しくなります。しかしコーワSWの専用フードはなかなか見つからず、見つかったとしても程度の悪いものか、程度が良い場合には高値で取引されています。ですので、このカメラを購入する場合にはフード付きの個体を購入することをお勧めいたします。私はこの専用フードを手に入れる以前には、二つのステップアップリングを連結し、レンズフードとして使用していました。とても安価で専用フードと比べても軽量で、見てくれもそれほど見劣りすることもありません。また、さらに一手間をかけて、ステップアップリングフード内面に艶消しのブラックのスプレーを施すと なお良いと思います。
オリジナルフード
ステップアップリングフード
参考文献
Kowa SW 使用説明書
参考サイト