・PETRI HALF


PETRI HALF

【PETRI HALF】SPECIFICATIONS

製造メーカー名

発売年

型式

画面サイズ

レンズ

ファインダー

ファインダー倍率

露出計

フィルム感度対応範囲

シャッター

シャッタースピード

セルフタイマー

シンクロ接点

フィルム巻き上げ

フィルム巻き戻し

電源

サイズ

重量

販売価格

日本の大卒平均初任給

その他

ペトリカメラ株式会社(栗林写真機械製作所)

1960年3月

目測式カメラ

18mm × 24mm(ハーフサイズ)

A.C PETRI Orikkor F2.8 28mm(3群4枚構成)アンバーコーティング

採光窓式ブライトフレーム、パララックス矯正指標付グリンファインダー 

0.5倍

レンズシャッター PETRI CARPERU-S

B・1/15, 1/30, 1/60, 1/125, 1/250秒

無し

X接点

1作動式トリガーレバー余裕角28° 巻き上げ角40° 同時セルフコッキング

クランク式

107x76x46mm 

385g

6800円

10800円

自動復元式フィルムカウンター、フィルムインジケーター

焦点調節:前玉回転式。∞. S(5), G(3), 1.5, 1.2, 1, P(0.8), 0.7m



作例

 

 感想

いろいろと想像を膨らませながらペトリハーフのことを書いてきましたが、とにかくこのカメラは他のハーフカメラに比べてもデザイン、カメラの機構の作りが良いカメラです。撮影していてもストレスなく、フィルム巻き上げも楽しく撮影でき、レンズの性能もシャープでよく写るカメラです。今となってはカメラメーカーとしては無くなり、現代から観るとマイナーなカメラメーカーという観がありますが、海外に輸出を行っていたカメラでしたので、ペトリを知らずに育った我々のイメージとは違い栗林写真機械製作所はしっかりとしたカメラメーカーでした。そういう意味も含めて個人的にはもっと評価されても良いカメラと思っています

 

 最近のフィルムは、当時のフィルムに比べて高感度と高画質を両立する開発競争が進み、現在ではISO400といったフィルムでもざらつきの少ない高画質なものになってきているため、当時よりもハーフサイズカメラの撮影は感度を上げたフィルムを充填でき、その分だけ被写界深度を出すためにF値を絞り込むことができ、ピントを外すことも少なくなり楽しめると思います。

 

 

 

 撮影方法

 


PETRI HALF

 このカメラは数あるハーフカメラの中でも、巻き上げ操作が1作動式トリガーレバーを搭載した珍しい機能を持ったカメラとなっています。デザインに関しては、人それぞれ好みがあるかとは思いますがペトリのカメラは良いデザイナー(当時は現代のように製品をデザインを行うデザイナーという職業は存在しておらず、当時の日本のメーカーにはそういう意識もなかったと思います。ですので当時は設計兼デザイナー出逢ったと思われます。)が存在したためか、特にレンジファインダーカメラは、機能以上によくデザインがされていると私は感じています。そういう意味ではこのカメラも例外ではなく、あえて左右非対称にデザインされたロゴマーク部の貼り革のデザインのアクセントとなっており、他社のハーフカメラと比べてみてもデザインは秀逸です。

 

 

Orikkor 28mm F2.8

 

 ペトリ ハーフに搭載されているレンズはOrikkor28mmF2.8、3群4枚のテッサータイプのレンズ。作例を見ていただいてもシャープな描写のレンズであることが理解できると思います。ハーフサイズになると36mm x 24mmのサイズよりも被写界深度はさらに深くなり、目測式でもそれを利用できるため撮影が行いやすく、ストレスなく撮影ができます。

PETRI HALF
ペトリオリコール28mm F2.8レンズは、その設計にあたり大倍率引き伸ばしを行うの十分満足すべき高解像力レンズ

 実際に撮影し現像された写真を見ると、高解像力レンズというのは眉唾物ではないことすぐに理解することができます。若干マゼンタ寄りの色調ですが、通常の被写体ではそれほど不自然な感じでもなく色調再現しています。しかし赤の面積が多い被写体を撮影しますと、赤はこのレンズ独特の鮮やかな色調になります。この特性を知ると撮影していてついつい赤の被写体を探してしまいます。

 

 柳沢 明:「ペトリハーフの機構と特徴」写真工業 1960年5月号からの抜粋。

 本機に装置されているペトリオリコール28mm F2.8レンズは、その設計にあたり大倍率引き伸ばしを行うの十分満足すべき高解像力レンズであり、ハーフサイズカメラ特有の新分野として教育スライドの撮影あるいは講演会、書籍、時間表なののメモ的利用をも考慮し、大なる包括角度による設計上の困難にもかかわらずF2.8の明るさにすることにしました。なお最短距離より無限遠撮影に至るまで最良の結像を得るべく、球面収差の状態と各収差のバランスは鋭意研究を重ね多くの日時を費やしたが、良き以上の結果を得たと自負しています。そしてその品位ある鋭い描写力は小型原板からとは思えぬ傑作を生むことと信じます。距離目盛冠には写真(被写界深度表と露出表の写真参照)のごとく(S)スナップ、(G)グループ、(P)ポートレートの3種のマークが色分けされて刻まれており(S)は赤色で実距離5メートルに相当し、中景から遠景までの撮影に使用され、絞り目盛冠の赤数字と合わせると固定焦点として2.5m以上無限遠までを鮮明に撮影することができます。(G)マークは実距離3mに相当し、5, 6人ぐらいの集団の記念撮影と一般写真(3m位の)に使用されます。(P)マークは人物の近写を主体とし、役0.8mの被写体を捕らえることができ、各マークのところにそれぞれクリックストップ付きとなっており、撮影中ズレを生じる事はありません。極めて初級の方や子供さん等がご使用になる時には季節と天候を加味してフィルムを選択し、距離、シャッター、絞り、の各目盛を総じて赤文字に合わせれば、カメラを向け、レリーズボタンを押すだけでファインダー視野マスク内にある被写体はミスなくキャッチできるという使用方法も可能です。

PETRI HALF

被写界深度表と露出表

PETRI HALF
距離目盛の数字はメートル単位。 P(0.8m)はポートレート(半身人物)用。 G(3mはグループ(集合人物)用。 S(5m取扱説明書には、赤マークによるスナップ撮影。各目盛の赤マーク(F8、1/60秒、S〈5メートル〉)に合わせておけば2.28メートル以上のものはすべて鮮明に写りますから、スナップのような咄嗟の撮影には極めて好都合です。露出もSS級フィルムを使えば、四季を通じて大体適性となります。この方法によれば、初心者の方でも、小さなお子さまでも、初めから間違いなく写せます。と記入されています。
取扱説明書に記入されている四季の露出表。
取扱説明書に記入されている四季の露出表。
取扱説明書に記入されている四季に応じたカラーフィルムの露出表。当時のカメラは、ASA(ISO)感度は100以下で設計していることがわかります。
取扱説明書に記入されている四季に応じたカラーフィルムの露出表。当時のカメラは、ASA(ISO)感度は100以下で設計していることがわかります。

PETRI HALF
単なるフィルムカウンター・フィルムインジケーターなのですが、何か本来の構造以上の機能を持っているかのようなデザイン。若干、缶バッジや、ブリキのおもちゃ感はありますが、小さい頃に興味本位で覗いた水道メーターのようなデザインで、ペトリカメラ株式会社はこういったパーツのデザインが上手いと感じています。

 

  当時のマミヤスケッチの発売の影響を受けて、日本のカメラのハーフサイズカメラ開発のきっかけが始まりました。マミヤ スケッチ 価格:12800円、1959年5月発売。その5ヶ月後、マミヤ スケッチに影響を受けたオリンパスがPEN 価格:6800円、1959年10月発売。さらにその5ヶ月後にこのPetri Half 1960年3月 価格:6800円を発売。当時多くのカメラメーカーがある中でPetriは早期にこのハーフカメラに参入しています。ここは私の想像ですが、ペトリハーフは、予定では販売価格をマミヤスケッチ よりのもっと高い価格に設定し開発をしていたのではと思っています。ペトリ、オリンパスはマミヤスケッチに影響を受けてほぼ同じ時期にカメラの開発を行っていました。ペトリ ハーフ はPetri専門サイト:petri @ ウィキによると、

米谷美久著”「オリンパス・ペン」の挑戦”に、ペトリは開発当初にはスクエアサイズで設計していたものを急遽ハーフサイズに変えたらしい。との記述があるが情報源の記載はなく真偽は不明である。ペトリハーフのダイカストシャシーはハーフサイズに最適化されていて、スクエアサイズのカメラを単にマスクしただけではない。

と記述があります。

 そこで、1つ気がついたことがありました。ペトリ ハーフのファインダーの窓は正方形の形状で、長方形のファインダーフレームの両脇に余白ができており、スクエアサイズで設計していた余韻が見えます。そういうことからも上記の米谷氏の記述は本当だったのではないかと推測できます。

 ペトリハーフの造り込みは、距離計は省かれていながらも、しっかりとした作りになっており、初期のPenの造り込みとは比較にはならないものになっています。何らかの理由でペトリはオリンパスよりも5ヶ月の発売の遅れをとり(上記のスクエアサイズ判からハーフサイズ判に変更と思われます。)、開発当時の目標価格は、しっかりとした造り込みからオリンパスよりも高い値段を設定していたと思われますが、オリンパスに発売を先に越されたがために6800円というPenの価格に、合わさざる終えなかったのではなかったかと想像できます。

 

PETRI HALF
1作動式トリガーレバー余裕角28° 巻き上げ角40° 同時セルフコッキング。レンズの下にあるレバーを下に引き下げ、指をかけ巻き上げを行いシャッターチャージを行う。この作業は小気味よく、操作を行っていて楽しめる。

 我々は上記の事情等とは別にハーフカメラを中古価格や評判等の一括りで見てしまいがちです。そこで、オリンパス ペン Wikipediaには以下のことが記載されています。

 

オリンパスはレンズ以外の巻き上げ機構やシャッターなどには独自の工夫を盛り込んだ簡素化を徹底し、予算内で生産可能かつ機能は損なわない合理的な設計を実現した。

 

オリンパスPen は巻き上げ機構は、歯車みたいなダイヤルをゴリゴリ回す「リヤーワインディング」(同様の方式は現在でもレンズ付きフィルムで見られる)を採用し、コストダウンをはかっていますが、ペトリ ハーフにはそういったことは見らませんでした。


「アサヒカメラ」1960年7月号のペトリハーフの広告。
「アサヒカメラ」1960年7月号のペトリハーフの広告。

 

 ペトリハーフ 

×÷2《フィルムは二倍 費用は半分!》

 緑の窓の《トラ・グラ*》カメラ

¥6800 ケース¥1200 グリップバンド付き

●眼が明るくてスナッピイ!

●軽くて薄くて使い良い

 35m/ハーフ判カメラのニューフェイス!ガラは小さくても

 チャーミングな性能がぎっしり・・・

 カメラの《トランジスター・グラマー》です。

●フィルム操作は機敏なピストル式です

●ファインダーは明るく見やすい

 グリーン・ブライトフレーム式

●レンズはシャープでピントが深い

 ペトリ・オリコールF2.8 / 28m/m

●シャッターは軽快性格な

 ペトリ ・カーベルS(B1/15~1/250)

●スナップやカラー写真にもってこいのカメラです

 ご旅行や散歩・スポーツにしゃれたセンスのパートナー《ペトリ ・ハーフ》をどうぞ・・・・・・・・・

《ペトリ ・ハーフ》の愛用者カードをお送りくだされば貴方

 のイニシャルをカメラケースにお付け致します。

 


 

 ペトリハーフの1960年の広告です。広告自体は至って普通ですが、広告の中の「×÷2《フィルムは二倍 費用は半分!》」の×÷の組み合わせ文字にセンスを感じます。本当は「フィルムは二倍 費用は半分!」はどちらも同じことを言っているわけですが、「×÷2」の部分になんか説得力のある広告です。結局プリントは通常の2倍になってしまうわけですが・・・

 

 広告の文面でトランジスター・グラマーという言葉が用いられていますが、ペトリハーフではトランジスターは使用されていませんし、何を言っているのか、私は理解できませんでした。そこでトランジスターをウィキペディアで見てみますと

 

   トランジスタ(英: transistor)とは、電子回路において、信号を増幅またはスイッチングすることができる半導体素子である。

 

と記載されています。

もちろんこのカメラにはそのような部品トランジスターは使用されているはずもありません(私はこのカメラを分解したことは無いので真相はわかりませんが・・・)。そこでトランジスターの後ろに付く名の製品は何かと想像し、そこで思いついたトランジスターラジオを調べてみますと以下のことが書かれております。

 

当時のラジオはそれまで主に使われていた真空管の代わりに、半導体素子のトランジスタを使うことで大幅な消費電力の低減がもたらされ、それによって小型化・軽量化・携帯化が可能になりました。1950年中頃に量産が始まり、1950年代後半から1960年代にかけて普及、70年代までに従前の真空管をつかったラジオをほぼ駆逐するに至りました。真空管ラジオは、消費電力も大きく、また真空管自体の外形の大きさから筐体が大ぶりで、卓上などに設置して使用するのが普通であ理ましたが、小型化されたトランジスタラジオは電源電圧が低く消費電力も小さいため、小型の乾電池で動作して片手で持ち運べる機器となり、野外でラジオを手軽に聞くことができるようになった。

 

これを読みますと、この当時のトランジスターラジオは如何に画期的で、当時の人たちの心を掴み流行となった商品だったことが窺い知れますし、このカメラの販売時期と合致します。

 

 そこで、日本のカメラメーカーはトランジスターラジオの当時の流行小型化・軽量化・携帯化」の部分に注目し便乗していたと想像します。ペトリカメラ株式会社はペトリハーフの開発により小型化・軽量化・携帯化」を達成し、販売は紆余曲折を経てオリンパスに遅れること5ヶ月でしたが、早い時期でハーフカメラブームに参入しています。

 

 ペトリカメラ株式会社はトランジスターラジオのような流行にどこのカメラメーカーよりも先に乗りたかったはずです。そこでペトリカメラ株式会社は小型化・軽量化・携帯化」=トランジスターと洒落を効かせイメージを作り、トランジスター・グラマー(glamor : 魅力的、優れた)と名乗ったのだと思います。 

PETRI HALF

カメラ裏蓋内部の英文 (サービス保障)

In the event "Petri" camera is defective or does not function properly, please send it to the address listed below and the camera will be repaired immediately free of charge . This service will apply even though the original guarantee card has been misplaced or lost.

 

KURIBAYASHI CAMERA INDUSTRY INC.

Export Dept. Tel(888)1111-4

No.1. Umeijima-machi,Adachi-ku,Tokyo,Japan

ペトリ ハーフのパンフレット

ペトリ ハーフの広告

写真工業 1960年5月号


 

 

PETRI HALF 取扱説明書


 

参考文献・参考サイト

 

・柳沢 明:「ペトリハーフの機構と特徴」写真工業 1960年5月号

 

・「アサヒカメラ」1960年7月号 

 

petri @ ウィキ

「ペトリカメラを調べるならここのサイト!」とても豊富な資料が揃っており、ペトリ カメラの資料間と呼べるサイトになっております。取扱説明書等の資料も多数アップしてくれていますので、操作がわからない時や、カメラ、レンズの仕様を調べるのにも大いに役立ち、とても貴重なサイトです。感謝です。

 


オリンパス ペン ウィキペディア

とても細かく資料が載っていますのでペン関係のことを調べるのにとても便利です。

 

 


半世紀遅れのカメラレビュー 古いフィルムカメラやレンズについて

カメラの記述だけでなく、作例も大きくアップしており見応え読み応えがあるハンドルネーム「kazahaya」さんのブログです。

通常のブログは、カメラの仕様、歴史のことは書かれているが作例はない。作例があるけどカメラのことはあまり記述されていないとか、なかなか読んでいて自分に合うサイトというのは見つからないものです。ましてやペトリハーフ はマイナーなカメラですので、取り上げる人もそれほど多くありません。プロフィールを見ますと「kazahaya」さんは芸大出身ということで納得です。

 


Web site名「レンジファインダー 」。

1. カメラの修理。 2. カメラの機種、仕様。 3. 作例

が掲載されているサイト。

レンジファインダーでどんなカメラか判らない場合に調べるのに、大いに役立つサイトがここ。ここのサイトは基本的に故障しているカメラを修理し復活させ、撮影するというのがコンセプトです。またカメラの基本仕様が掲載、作例も載っていますので、中古カメラを購入するか否かの場合には大いに役立ちますし、修理の仕方も勉強になります。

 




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