マミヤスケッチ Mamiya SKETCH

【MAMIYA SKETCH】SPECIFICATIONS

製造メーカー名

発売年

型式

画面サイズ

レンズ

ファインダー

ファインダー倍率

露出計

フィルム感度対応範囲

シャッター

シャッタースピード

セルフタイマー

シンクロ接点

フィルム巻き上げ

フィルム巻き戻し

電源

サイズ

重量

販売価格

日本の大卒平均初任給

マミヤ光機

1959年5月(1960年2月生産中止)

距離計連動式カメラ

24mm × 24mm

MAMIYA-SEKOR 35mm f2.8(3群4枚)絞り羽12枚

逆ガリレイ式透視一眼二重増合致式距離計連動式ファインダー

 

レンズシャッター コパル製

B・1~1/300秒

有り

X接点

レバー式

クランク式

71×105×53mm

440g

12800円

17,354円。



 

作例

 

 

感想

 マミヤスケッチの写りは細かいことは別にして、いつも写りは安定しているので撮影していても不安が頭をよぎることもなく、シンプルな構造で信頼性のあるカメラであるため 撮影に集中することができるカメラです。このことは、至極当然のことのように思えますが、このようなオールドカメラは写りに何らかの問題があることが多く、機械的トラブルも多いのです。こういったカメラにおいて撮影に集中できるというのはとても大切なことになります。

 

また、小ぶりでありながらも、操作性に問題があるわけではなく、このサイズで距離計連動式カメラというのはとてもありがたいです。とにかく撮影をしていてとても楽しく、オールドカメラ特有のストレスは感じません。これらの事が所有者にこのカメラに愛着を沸かせる理由なのかもしれません。。

 

 あえてこのカメラの難点を言うとすると、カメラ自体に吊り環がなく、カメラケースなしではネックストラップを付けることができないことです。専用のカメラケースは販売されていますが高価ですので、購入の際にはできるならばケース付きのものを探し、購入することをお勧めいたします。

 

マミヤスケッチ Mamiya SKETCH
マミヤスケッチ Mamiya SKETCH

  35mmスクエアサイズ判レンズシャッター式カメラ。小型・軽量ながら連動距離計を搭載。レンズは新設計の高性能レンズで、3群4枚構成のテッサータイプのレンズ。

 

 

 私はこのスクエアフォーマットのカメラは、オリンパスPenの影響を受けて企画制作したカメラと私は勝手に思っていましたが、調べてみますとそれは大間違いで、このカメラがオリンパスや栗林写真機械製作所(ペトリカメラ株式会社)に影響を与え、その後 日本のカメラ界にハーフカメラブームが訪れるきっかけを作ったカメラだったということでした。

 

 マミヤ スケッチは宮部甫氏の設計であり、ペンタゴン社のペンティをヒントに距離計のないハーフサイズのシンプルな小型カメラとして計画したものだったらしい。当初はハーフ判として開発されたものの、アメリカのバイヤーから ハーフでは売れないとアドバイスを受けたことと、社長からの注文・製造部の仕様変更等により「私の最初のオリジナリティはすっかり失われてしまい、特徴のないカメラになってしまった。」というスクエア判に設計変更が行われたカメラと、巷では言われています。そこで、もう少しここに対して踏み込んで調べていますとTwitter上で、サイコMさんの以下のような書き込みがありました。


 「マミヤスケッチ・・設計者、宮部甫氏曰く「会社の事情で、もっとも不本意な設計をしてしまったカメラ」本人から、聞きました・・w」

 

「悪いカメラ”というワケじゃなくて、宮部さんが結核で1か月入院している間に、自分の原設計と似ても似つかぬモノになってしまったから1番、不本意なカメラ」になったそうですwこれと、マミヤマガジンの設計のことで、宮部さんは会社と揉めて、独立して設計事務所開設」

 

 今となってはこのカメラは他のハーフカメラとは違い、珍しく、使い勝手の良い、品数が少ない高値で取引されるカメラとなるわけなのですが、当初 宮部氏が企画開発したカメラのコンセプトが後にヒットするという事実を目の当たりにし、さぞかし悔しい思いをしたろうと思います。距離計のないハーフサイズのシンプルな小型カメラとして計画したものが、最終的には距離計を搭載、正円に近い絞りになる12枚絞り羽、4枚のレンズシャッター、 巻き上げレバー搭載という贅沢な装備で12800円で販売され、5ヶ月後にはレンズの性能以外はコストダウンを図ったオリンパスのPenがおよそ半額の価格で販売され、マミヤスケッチ は1年経たずに製造中止、オリンパスPenはその後大ヒットを迎えることとなります。

 

 マミヤスケッチが発売された1959年のサラリーマンの平均月収を調べてみますと17,354円。当時はカメラがいかに高かったかということが理解できます。こういった当時の時代背景ををみれば、コストダウンを図りながらも描写だけにはこだわった半額のハーフカメラの方が売れるというのは理解できますし、宮部氏の企画もそこまで考えたものだったのではないかと想像できます。とはいえ当時から、カメラ製品は日本国内よりもアメリカで販売成功することを目標としていたので、会社の方針としては、宮部氏とアメリカの意見との間で迷ったことであったろうと推測できます。結果としては、取扱いに起因する故障のしやすさ等の返品続出であまり台数は売れず、9ヶ月間の製造でこのカメラは幕を閉じることとなります。

 

 オリンパス、キャノン、京セラ、コニカ、ペトリ 、ミノルタ、ヤシカ、リコー、フジ写真フィルムが、ハーフサイズカメラに参入しますが、マミヤ はその後ハーフサイズカメラには参入していないというのも皮肉な話です。

 

 また、マミヤスケッチ は35mmスクエアサイズ判からハーフサイズ判への影響を与えただけでなく、カメラのネーミングにも影響を与えたカメラと思われます。マミヤは「スケッチ」、他社メーカーはオリンパス「ペン」、ミノルタ「レポ」、コニカ「アイ、レコーダー」といったカメラの小型化からの可愛いネーミング、そして、従来の枚数の2倍撮影できるということから、鞄やポケットに忍ばせて、「毎日のように記録、撮影しましょう!」という意図が見える名前をつけ始めました(現在のインスタグラムのような感覚だったのでしょうか)。そういう意味では如何にこのカメラが、カメラメーカーに影響を与えたかということがわかるかと思います。

マミヤスケッチ Mamiya SKETCH
おしゃれなデザインのマミヤスケッチ の外箱。外箱には日本語が一切見られないことからもアメリカを意識した製品だったのかもしれない。側面には「20枚用フィルムで30枚撮影できる」と英文で明記されている。

マミヤスケッチ Mamiya SKETCH
取扱説明書に書かれている被写界深度表とその説明書き。
マミヤスケッチ Mamiya SKETCH
取扱説明書には、「本機は、距離計連動ですが、絞り目盛をF8に合わせてから焦点距離リングの5メートル位置のクリック・ストップを利用致しますと、2.41メートル以上のスナップ撮影に、いちいち焦点を合わせなくても申し分のないピントの写真が得られます。」と記されている。

マミヤスケッチ Mamiya SKETCH
絞り羽は12枚なため常に正円に近い形の絞りで、とても作りの良いものとなっています。
マミヤスケッチ Mamiya SKETCH
マミヤスケッチ の当時の外箱とその中に内包されていたもの。レンズフードは別売。
マミヤスケッチ Mamiya SKETCH
マミヤスケッチ Mamiya SKETCH
マミヤスケッチのロゴマークには赤と黒のバージョンがある。
マミヤスケッチ Mamiya SKETCH
故障の元となった曖昧なスプロケット解除ボタン。のちに下段向かって右側の表記に変更されます。ということからもこの表記のモデルの方が後期のモデルということになります。
マミヤスケッチ Mamiya SKETCH
スプロケット解除ボタンは、「巻」のポジションで、スプロケット(カメラ本体の銀色の軸棒)を押上げ、フィルムの巻き戻しができる状態になります。「戻」のポジションでスプロケットは戻り、歯車とフィルムのパーフォレーションとが噛み合い、巻き上げができる状態になります。
マミヤスケッチ Mamiya SKETCH
なおファインダ視野内に見える輝かしい輪郭線は、フィルム面に写る被写体のの範囲を示すもので、最近距離ではパララックスの作用で、写る範囲が移動し、輪郭の左側が内側の(「 )印のところまで移ります。

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マミヤ スケッチの記事

 

写真工業  1959年8月号  No.88

 

 

写真工業  1959年5月号  No.85

マミヤスケッチ の記事と、広告、新製品の紹介。

写真工業 2006年10月  2006 

井上康夫著 / 特集 四角い画面のカメラ

 


マミヤ スケッチの取り扱い説明書


参考資料

 

・マミヤスケッチ 取扱説明書

・写真工業  1959年   5月号  No.85

・写真工業  1959年   8月号  No.88

・写真工業  1995年 10月号  No.690

・サンケイカメラ 1959年6月号 特大号

 

参考サイト

よもやまカメラ

タイトル通りいろんなカメラのことが書かれているサイト。スクエアサイズ版のカメラの撮り比べ写真有り、作例ありでとてもためにるサイトです。

 


写真機の話をしよう

色々と興味深いカメラを取り上げています。私の知らないカメラも掲載しており、物欲が湧いてしまいました。タイトルだけでも面白いブログです。

 


写真姫-syasinki

「ほぼ趣味のことをひたすら書くブログ」書かれています。ブログ内の写真はとても綺麗で参考になるブログです。作例も大きくアップしてくれていて、写りも参考になり、欲しいカメラがある際にはとても参考になるはずです。カメラ好きならここのブログ内をウロウロとしてしまいます。

 


半世紀遅れのカメラレビュー 古いフィルムカメラやレンズについて

カメラの記述だけでなく、作例も大きくアップしており見応え読み応えがあるハンドルネーム「kazahaya」さんのブログです。

通常のブログは、カメラの仕様、歴史のことは書かれているが作例はない。作例があるけどカメラのことはあまり記述されていないとか、なかなか読んでいて自分に合うサイトというのは見つからないものです。ましてやマミヤスケッチ のカメラはマイナーなカメラですので、取り上げる人もそれほど多くありません。プロフィールを見ますと「kazahaya」さんは芸大出身ということで納得です。




コメント: 2
  • #2

    マニュアルカメラ・レンズの操作はなかなか興味深い (月曜日, 31 1月 2022 16:08)

    加藤さんありがとうございます

  • #1

    加藤雅司 (金曜日, 21 1月 2022 14:26)

    メーカーのページと見紛うね。凄いわ!歴史も知るとヤバくなる(笑)